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テーリ・テムリッツ / K-S.H.E
Exclusive Interview
 
- Yuka Noguchi


In Cisco Records, March 13 2006.

cisco homepage
 

K-S.H.E名義での第一弾アルバム発売を記念してTerre Thaemlizさんにインタビューしました。Terreさんとシスコとの関係はとても長くてComatonse Recordings設立当時からのお付き合いです。心から尊敬するアーティストが新名義で望んだ第一弾アルバムリリースにあたって、アーティストとしてのブレる事のない思想に触れられる絶対に読んで欲しい素晴らしい内容だと思います。かなり深い内容になりましたが、日本語でがんばって答えてくれていますよ!

わたしは自分で頑張って日本語でインタビューに答えてみました…
読みにくいところがあったら、ごめんなさい!

Terre Thaemlitz

1)私が始めてテーリさんの音楽を知ったのはComatonse Recordingsの000番 (Raw Through A Straw/Tranqulizer)でしたが、このレコードが出る前までの活動を 教えてください。そして音楽を作ろうと思った理由、また自身のレーベルを作った理由は何ですか?

86年、大学の為に、ミズーリ州からニューヨーク市へ引っ越ししました。 子供の時から、ちょっと大きめのレコードコレクションを持てましたね… Kraftwerk, Gary Numan, YMO, 日本のアルファ・レーベルのリリースなど… その音楽はミズーリ(またアメリカ)で全然人気じゃない。 とても見付けにくい。 (本当は、レコード屋じゃなくて、ガソリンスタンドにあった「$1.00」売れない物 の段ボールからよく見付けた!) でも、わたしも人気じゃない変わり者だから、ちょうど良い人生サウンドトラックだ と思った(笑 また、ローラーディスコ(ローラースケートで踊る事)も大好きだった!

ニューヨークへ行ったら、急にレコードコレクションが何倍にも増えた。 有名なレコード屋DANCE TRACKSやST. MARKS'S SOUNDやDOWNTOWN RECORD GALLERYや BLEEKER BOB'Sの近くに住んでいたから、 どんなエレクトロニック音楽も買う事が簡単にできました。 パートナーやルームメート達が怒って、「レコードで何かをするか、あるいはそれを 捨ててください!」と言いました… だから、DJ Sprinklesは生まれました!

最初に、友達の為にいろいろなミックステープを作った。 その時代、わたしと友達達はエイズや女権や性別権などのアクティビストでした。 ACT-UPと言うエイズ・アクティビスト・グループの貧民者救援の為に, ミッドタウンのCLUB 59でデビューしました。 (とても微妙なクラブ…「ライスバー」と呼ばれる…アジアン・フェティッシュ・ゲ イバー)

その時、ニューヨークではよく暴動がありました… 今のニューヨークは全然違いま すね。 警察からの暴力はすごくひどかった… 許せないぐらい。 たぶん皆は80年代末のハウス・シーンを考えると、LOVE&PEACEのイメー ジを考えるけど、 わたしの経験からのイメージは暴力と辛苦ですね。 皆は色々な辛い事から出たいから、クラブはオアシスになったね… でも、その辛いコンテクストを忘れるか教えないのは、今の「ハウス・シーン」の一 番失礼な事ではないかと思います。 それも許さないね。 今、皆は沢山「ハウス・クラシック」レコードを持ってるけど、その時代でそのクラ シックのプレーがあまり出来なかったよ… 皆が歴史を改ざんした。 普通のメジャーDJはつまらなそうでした… 「ディープ」は絶対なかった… メジャーレーベルのボーカルトラックばっかり。 Ecstacyを飲まなければ、全然楽しめなかった… わたしはずっとドラッグとかお酒を飲まないから、本当につまらなかった(笑

貧民者救援の後、CLUB 59や色々な小さいクラブでDJしました。 そして、いつもメジャーレーベルのレコードをプレーしなかったから、クビになった。 でも、ギャラは安過ぎだから、本当に自分の好きな音楽だけをプレーしたかった…我 侭です! 91年、「SALLY'S 2]と言うトランズセクシュアル売春婦のクラブでレジ デントDJになりました。 毎週、月/金/土の22時から4時まで、一人でDJしました。 そのスケジュールだったから、ロングプレーが気に入った!(笑 そのクラブのニューハーフはプエルトリコ人とアフリカンアメリカ人ばっかり… イースト・ビレッジの「楽しいクラブ・シーン」な感じじゃなくて、やっぱり「人生 は辛い」感じ…わたしの気分だね(笑 わたしは建て前「ハッピー」な感じがあまり好きじゃないから、すばらしい経験でし た。 毎週間、Dorian Coreyと様々なトランズジェンダー・レジェンドのショ ーの音楽をプレーしました。 わたしもトランズジェンダーだけど、ニューハーフになりたくないから、恥ずかしか ったのでいつも男装しました!(笑 もう、自信がなかった!わたしの女装はもっとシャイな感じかな… その起源だから、今までもDJ Sprinklesのキャラは普通に男装ぽい。

もちろん、SALLY'Sでもわたしは頑固にメージャー・ボーカルをプレーしなか ったので、やっぱり首になった(笑 (Gloria Estefanのレコードをプレーしなかったからかな…) でも、首になる前にトランズジェンダーの皆から「Best DJ 1991」のunderground grammyをもらった。 とても嬉しかった… 今のプロモーターは「underground grammy」と聞くと、「この人 はニューヨークで人気だった」と思うけど、それは間違い。 そのグラミーの本当の意味は、いつも人気じゃなくて首になったけど、トランズジェ ンダーのお客さんの投票からまだ誰かが聞いている事が分かった事です。

たぶんわたしの教えたい事は、 その時代に、ニューヨークで5人ぐらいの有名なDJがモノポリーになった… 今も、その同じDJ達はまだニューヨークでモノポリーを持ってますね… たぶん東京は同じ問題があるみたいですね…どこでもそうかな… でも、その時、他のニューヨークがあったよ… その、「他」のニューヨークはシーンにならなかった… レギュラー店がなかった、仕事が出来なかった、お金がなかった… わたしはその「人気は関係ない」アウトサイダーな感じから来たから、その感じを守 りたい… 微妙にシーンに入れない人ですね。 困った(笑 でも、困ったはいい…

SALLY'Sの後、DJの事を一年ぐらいちょっとギブアップしました… プレーができる店を見つけられなかったけど、 まだレコード屋から良い音楽を買う事が出来たから、 自分もレコードを作ろうと思った。 そんなに真面目な感じじゃない…自分の気分を治す為に… 微妙にレベンジの為かな (笑 DJする事ができなかったから、子供の時に好きだった絶対売れない変わり者のクロスオーバー・レコードを作りたいと思った… ダンス音楽だけじゃなくて、色々なジャンルで作りました。 その後、ハウスじゃなくて、アンビエントDJになりました… ニューヨークの始めてのオール・アンビエント・パーティー「Electric L ounge Machine」で良くゲスト・プレーしました。 今まで様々なパフォーマンスやジャンルで働くね。 日本にDJのイメージが多いけど、本当にメインじゃないですね。 わたしの日本語はまだ上手じゃないから、わたしがメインでする事を上手に説明ができません… でも、教えたいから、2003年の「愛の爆弾」 (http://www.comatonse.com/writings/ainobakudan.html)から、バイリンガルのリリースで頑張ってます。

2)リリース当時と今で最も変化したと思うことはなんですか?

やっぱり、皆は「ハッピー」ばっかりで、どんなシーンもエッジがないですね。 ハードコアやインダストリアルも、全部のコンテクストはなくなって、「感じ」だ けになった… イメージだけですね。 意味が消えた。 その感じで音楽を作る事は普通だけど、勿体ないと思います。

もし「ハッピー」な気持ちからハッピーな音楽を作れば、 なんか、 つまらない(笑 ヴェルサイユぐらいつまらないし、普通の人の人生に失礼かもしれない(笑 汚いとか辛い事を見せないと、本当のきれいさが分からなくなる!

問題は、今の社会に階級意識はほとんどないです。 皆はマクドナルドのスローガンで、「I'm Lovin' It」で大丈夫で、何も考えたくないみたい… 悲しい…

3)日本にきた理由を教えてください。また創作活動する中でアメリカと最も違う点 (良い点でも悪い点でもOK)は何ですか?ヨーロッパ等でも活躍していますがそれは 日本やアメリカと比べて大きく違う点はありますか?

アメリカの事がイヤになった。 逃げる事がずっと出来ないと思ったけど、微妙に出来たみたい。 このテーマで、最近の「Trans-Sister Radio」と言うリリースの 日本語の脚本を見てください… 「トランズ・シスター・ラジオ」はトランズジェンダーの移住に関するエレクトロア コースティックラジオドラマ。 原作はドイツHRラジオ(日本のNHKみたい)のために作成されました。 CDはポルトガルのGrain of SoundとBase Recordingsからリリースされました。 http://www.comatonse.com/tsr/japanese.html

大体93年から、アメリカでわたしは仕事がなかった… メインはヨーロッパでのエレクトロアコースティックのリリース(Mille Plateauxレーベルなど)。 コマトンズは日本ばっかり。 また、シスコばっかり、そしていつも何%ハウスばっかり(笑 やっぱり、分裂病的ですね… でも、そのポイントが好き… わたしの頭の中では、音楽は心から発するものじゃなくて、ただ言語的なものです。 テーマを考えて、コミュニケーションの為に音楽を作ります。 普通の音楽家とリスナーには全然人気じゃない考え方だけど、 なんか、メッセージがないとただのオナニーになると思います。 (ごめん、LOVEはメッセージじゃない…どんなラヴ?だれのラヴ?どうやってそうする?ただラヴを言う事は一番売りやすいだけ…  今、売る事意外そういう音楽に意味がありません) オナニーを他の人に見せる事はいらないね… まぁ、素敵な人にだけ、ふふ… アメリカも、日本も、ヨーロッパもこの問題がある。 オナニーより、ファック・ミー・アップの音楽がいいかな…ふふ

4)ヴァイナルやアートワーク等にもこだわりを感じますがデータ配信による音楽マ ーケットについての考えを教えてください。

何のメディアでもダウンロードできる事は良い点、でも悪い点でもありますね。 ビニールは楽しいけど、確かに重いし、不便。 でも、デザインが好きから、大きいなフォーマットは素敵だと思います。

ダウンロードの問題は2つ… サウンドクオリティーは微妙。 また、パッケージがなくなった。 72dpiのホームページ・デザインは安過ぎで、あまり感じが来ないですね。 わたしのCDはいつもポスターとか大きなテキストがあるから、 最近ちょっと困ってる。

もう一つの問題は、 「自分の音楽をインターネットに入れるとスターになれそう」の話しが多いですね… それはインターネット会社のプロパガンダですね。 逆に、インターネットは世界のゴミ袋と思います。 それは悪い事じゃなくて…それはインターネットのすばらしいこと! 素敵なカオス! でも、そのカオスを良く見ると、皆の夢は会社のと同じみたい… どうして皆は人気になりたい? どうして皆は普通の何も考えない人にアピールしたい? 全然わからない… 「どんなオーディエンス」を考えなさい! 「皆」の為に音楽を作らないで! よく考えるオーディエンスの為に、スナイパー音楽を作れなさい!

スナイパー的なインターネットレーベルの一つはUltra-redの100%無料「Public Record」(http://publicrec.org/)です。 わたしがホームページをデザインしました(ごめん、英語ばっかり)… 最近の「A Silence Broken」ダンス・コンピにわたしの曲も入った。 コンピのテーマは「エイズ・アクティビストがいなくなったけど、エイズが増える、どうする?」

5)世間でいう”ミュージックビジネス”とテーリさんの音楽活動は根本的に違うと 思いますが意識している点はありますか?

ミュージックビジネスは資本主義の徴候の一つだけですね。 わたしはこの世界が好きじゃない… でも、逃げる事ができない… マルクス主義的な夢を持ってない… ニヒルです!(泣

そして、どうする? 無料で働かない… 同時に、売る事を考えない。 複雑な矛盾ですね… ビジネスができにくい! できれば、リリースとかライブのプライスを考える時に、マーケットの普通のプライスと比べて考えない… 自分の「生きてるプライス」(家賃、食べ物、etc.)を考えて、そのプライスをお願いする…かな…? わたしは10年以上この感じで生きてきた… とてもラッキーなだけですね。 そのうちできなくなる、間違いない。 でも、その日まで、意味ある物を作りたい… ヒーローとかロマンチストになる事じゃなくて、ただそうしないと、こんな意味がない世界に殺セ〜ッな気分が危ないレベルになりそう、ふふ

6)自身のパーティーを含めて今のクラブシーンについてどう思いますか?

前に言った通り、エッジとか意味がないですね。

自分のディーパーラマのイベントにも、コンテクストは違いますね。 わたしの頭の中では、まだトランズセクシュアル売春婦の音楽をプレーしてますね!(笑 でも、日本のハウスイベントはあまりセクシュアルじゃないですね。 それは良いか悪いじゃなくて…ただ違う。

オリジナルコンテクストが見えない事は問題けど、 逆に、ニューヨークの人達より、日本のお客さんは音楽をもっとちゃんと聞いて大事にするみたい… 複雑ですね… ディーパーラマは2年以上つづいてる、すばらしいと思いますよ!

7)インターネットの普及で世界中の価値観が同じようになってきていますが、その ような状況においてアーティストとしてどのように個性を出して行きたいと考えますか?

個性はないと思います。 また、いらないです。 まだ日本語で説明が上手に出来ない話しの一つは、 「オリジナリティーは絶対ありません」ということ。 全部のものには前のもの(先輩?)があります。 サンプルから音楽を作る事は「前のコンテクストを自分のコンテクストから考える」 ことじゃないですか。 確かに、残念な事は普通の音楽家はその前のコンテクストをあまり考えてないみたいに感じられる事ですね。 でも、わたしや他の人達の中にもその事を良く考える人がいます。 インターネットによってオリジナリティーがなくなりそうな事は問題じゃなくて、 これは大切な「オリジナリティーはありません」のレッスンではないかと思います。

8)今回のアルバムで最も伝えたかったことや、制作のルーツになったアイディアは 何でしょうか?

やっぱり、「ルーツではなくルート」はモジュールでやるディーパーラマから来ましたね。 その複雑なコンテクストの矛盾の為に、色々な曲を作った… ハウスのルーツは「心」じゃなくて、前のものとか他のコンテクストだと思います。 また、自分の移住の経験から、わたしのルーツも考えた… やっぱり、ルーツはない… 源とか始まるというオリジナリティーはない… トランズジェンダーの事も、男性な気分も女性な気分も持ってないけど、そのシステ ムの中に生きてる… クイアーの性別の事も、ストレートでもゲイでもバイでもないけど、そのシステムの中に生きてる… アイデンティティーのルーツ(源)はない。全部はただルート(経路)だけです。

ちょっとプレスリリースからけど: 『人々が今までテムリッツのリリースに期待したように、今回の「ルーツではなくルー ト」でも広範囲の社会テーマをミックスしています。アイデンティティーvs.移民 資格。コミュニティーvs. ニューハーフ間の暴力。確実性vs.盗んだ文化。 クラ ブにおけるアメリカの黒人オープンゲイ神話vs.「Down-Low」黒人隠れホ モブーム。無邪気vs.子供の遊びの中にある暴力性。それらとHIV薬物検査か ら、ニューハーフと女性の失業率への、性的に無定形で日本の女子高生に装うトランズジェンダーまで……』

9)今一番関心があることは何ですか?また今進行中のプロジェクト等があったら教 えてください。

ちょっと関係ないけど、関心があることはただ散歩することです!

最近の日本の仕事は… 今、Moochy様の為にリミックスを作ってます。

秋に、Mule Electronicから3枚のEPとCDアルバムで昔のコマトンズの曲とpreviously unreleased mixesをリリースします …

10)テーリさんの人生のテーマはなんですか?

そんな暗い秘密をここに教えない… ふふ